通り庭の家

手入れの行き届いた庭と住まい

敷地南半分にはご夫婦で手を入れた庭園があり、北側道路の北側には広大な緑地が広がります。理想的な建築環境です。この場所に家を建てることが、建て主はもちろん、道行く人にとっても心地よく眺められる結果につながる様に求められ、屋根形・庇の出・軒の高さ・窓の位置や大きさ・屋根と外壁の仕様などについて、ご家族と私との間で細部まで濃密な打合せを続けました。

出会いから竣工までの期間は、概ね1年半から2年間です。計画と打合せに半年から1年掛かり、工事を半年以上続けることになります。設計内容の決定、事業費の使い方の裏付け、建築許可、工事の監理と管理、工事費の支払いの整理などが業務ですが、設計監理とCM(工事管理)を引き受けるので、1棟に付き1500時間から2000時間費やすことになります。共に妥協しないためには、時間を掛けることが必要です。

いぶし銀和瓦葺き屋根、竹小舞下地土佐漆喰塗りの外壁、簓子下見板張りの外壁腰板、木製建具、通り庭土間の敷瓦張り、サンルームの三和土(叩き土間)仕上げなど、現在まで続けているシティ環境建築設計の仕様です。時間の経過に伴う変化が美しい家になったと思います。

南側道路から庭を通って玄関に至り、北側の奥に続く通り庭土間から、部屋へ上がる平面構成です。通り庭は、間口が狭く奥行きの長い街道沿いの町屋では普通に見られる形式ですが、+形式的な玄関を実用本位に変えることで、とても静寂な空間が生まれました。建築を通り抜けるという発想は、敷地条件によっては楽しさを引き出す結果に繋がります。

三和土(たたき)土間仕上げのガラス屋根のサンルーム。物干し場でもある。
南側軒下空間の古瓦小端立て埋め込み。点前柱右側植栽下に水琴窟がある。
南側庭から北側庭に抜ける平瓦敷の玄関通り庭。
玄関から部屋に上がる式台と飾り棚。
広間と玄関土間。玄関通り庭の壁は黄土ハンダ塗り。
市中の閑居の体をなす庭園。
外部開口部は全て木製建具。
吉野杉の厚板を用いた長さ2.4mの大テーブル。
2階板の間空間。軒桁高さを極力低く押えた。
2階板の間南窓から眺める楓の紅葉。

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