平屋で住むことの豊かさ
建て主直営というやり方で、30年以上職方仲間と家づくりに関わってきました。お付き合いのある職人衆は100人を超えるでしょう。経済評論家の荻原博子さんの書かれた、「職人を泣かせて建てた300年住める家」角川書店 という本に我々の家造りの一面が紹介されています。妥協がないので、やりがいあって腕を上げる場にはなっても、儲かる仕事ではありません。しかし、これまでチームの大工・左官・鳶の職方から設計依頼を受け、自宅の家づくりを一緒に行ったことを考えると、職方衆も自分たちの仕事に誇りと満足感を持っているようです。
さて、埼玉県深谷市で三代続く工務店の当代の大工棟梁から頼まれて設計した仕事で、職方チームからの依頼は4棟目となりました。この工務店の大工衆とは、これまで東京・埼玉・千葉・群馬・長野・八丈島などで40棟以上の付き合いがあります。最初に参加した1997年の現場ではまだ小僧扱いでしたが、その後大工として参加し棟梁を任せるまでに成長しました。
加工場近くの建設用地は、ケーン・ケーンというキジの鳴き声を聞く、のどかな場所です。日当たりは良いのですが、夏は隣の熊谷市と共に37度、冬は赤城おろしの空っ風が吹くので、過酷な気象条件の土地です。「エアコンに頼らない生活をしましょう」などという寝言は無いとしても、夏冬の室内環境を建築の仕組みで和らげるとこはできると考え、平屋建ての屋根に長い越屋根を提案しました。東西に長い東側に子ども室と玄関、西側に寝室と浴室、その中間に台所と広間を設け、切り妻屋根に載せた越屋根窓から夏は風を抜き、冬は直射光を入れようという計画です。越屋根窓の開閉操作の為に、地棟梁の上にキャットウォーク状の格子床・格子壁を設けています。
軒の出が1.2mと長いので、夏の日射遮蔽と冬の日射取得はうまく行っています。冬季は格子を通して腰根屋根窓からの採光もあります。夏の越屋根からの排気は気温次第のようです。大胆な造りですが、今後どのようにするとより効果があるか、住みながら工夫してゆくことになりそうです。