室内の空間構成から生まれる屋根形
平面計画を進める際に、敷地の条件をきちんと数値化しておくことは最初の作業です。方位・道路幅員・建蔽率・容積率・道路斜線制限・北側斜線制限など法的制限以外に、南側の建物との距離と日陰の範囲・季節ごとの風向・緑地や歴史的建築物の有無なども大事な要素となります。何度も敷地周辺を歩いて場の持っている力を感じ取り、地域の特性を探ります。
今回の用地は東西に長く南側に2階建てのアパートが接し、北側に西側用地通路と道路、東側に公道と敷地より約3m高い線路敷跡地利用の歩道緑地があります。冬の日射確保の為に、家族が集まる居間食堂を地面から1.4m上げた高床としました。玄関・浴室・寝室は地面から通常の1階の高さとし、その上に子ども達の為の2階広間を設けました。中2階的な広間を経由して2階の子ども達ゾーンに行く、スキップフロアの構成で、当面の間、広間と2階子どもゾーンの間は壁を設けず繋がっています。
東西に長い空間を覆う屋根は、西側道路面を一番低く設定し、東側2階建て屋根までの間を、内部の利用用途に応じた節目ごとに分け、切り妻屋根をずらしていく設計にしました。さらに、一番高い2階部分の屋根の家に、風を抜くための越屋根を載せました。東側の歩道から家全体を眺めると、斜面に設けた登り釜の素屋根によく似ています。初めて見る人はきっと、オヤ! フフッ! と驚き、笑って行き過ぎるのではないかと想像します。楽しいことは大事な要素です。
毎年暮に、職方数人に交じって私も、この家での食事会に招かれます。打合せの時から数えると長い時間が経過し、3人の子ども達の成長する姿に触れるのも楽しみとなっています。